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Hokkaido University
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CHAIN ACADEMIC SEMINAR #46

第46回CHAIN Seminar 岡澤 剛起「我々は抽象的な物体概念をどのように獲得するのか:マカクザル研究からの示唆」

日時 2024年9月11日(水) 16:00-17:30
場所 北海道大学 医学部中研究棟3階 共通セミナー室3-1
言語 日本語
主催 人間知・脳・AI研究教育センター
開催方法 対面およびオンライン(オンラインのみ要登録)

第46回のCHAIN Seminarは中国科学院神経科学研究所グループリーダーの岡澤 剛起博士に「我々は抽象的な物体概念をどのように獲得するのか:マカクザル研究からの示唆」と題して講演をしていただきます。

岡澤 剛起氏は自然科学研究機構生理学研究所でマカクザルの視覚情報処理についての研究を行って博士号を取得してから、ニューヨーク大学神経科学センター(Roozbeh Kiani研究室)に留学されました。ニューヨーク大学で知覚的意思決定の神経メカニズムについての重要な仕事をされた後、中国科学院神経科学研究所でグループリーダーとして研究室を主宰しておられます。

今回は、北大で開催される日本神経回路学会 第34回全国大会 CHAIN主催シンポジウム「脳・神経回路の理解のための力学系的アプローチ」での講演のために来日される際に、CHAINセミナーでもお話いただけることになりました。なお、CHAINセミナーでお話しいただく内容と日本神経回路学会シンポジウムでお話しいただく内容は別のものとなっております。

オンライン参加の方へ: Zoomの登録は以下のURLからお願いします: zoom登録ページ

Seminar1

Lecturer

岡澤 剛起
Gouki Okazawa

我々は抽象的な物体概念をどのように獲得するのか:マカクザル研究からの示唆

Abstract:

ヒトは視覚的に認知した外界の物体を様々な抽象度で分類できる。例えば犬の画像を見たときに、それが犬であるだけでなく、哺乳類であり、生物であるとも分類できる。このような高度な分類は言語経験や知識に依存するように感じられるが、ヒトだけがこれをなしうるのだろうか。興味深いことに従来研究でマカクザルの視覚野が生物と非生物の画像に対して異なる応答を示すことや、サルが生物と非生物の画像を分類するよう訓練できることは分かっていた。しかし、それ以外にどのような抽象的な分類ができるのか系統的に調べられていない。我々は新規に物体分類課題をデザインし、マカクザルが生物・非生物、自然物・人工物、哺乳類・非哺乳類など多種多様な分類課題をいとも簡単に学習できることを発見した。低次画像特徴ではこの行動は説明できないが、畳み込みニューラルネットワークは同じ分類ができたので、サルは高次画像特徴に基づいて課題を解いていると考えられる。すなわち、多くの抽象的な物体概念は言語や知識に頼らずとも霊長類視覚系の抽出する画像特徴で素早く学習可能であり、この機能がヒトの高度な物体概念形成を部分的に支えていると予想される。

講師紹介

2004-2008 京都大学総合人間学部
2008-2013 総合研究大学院大学生命科学研究科
(自然科学研究機構生理学研究所・小松英彦研究室)
2013 博士(理学)
2013-2015 自然科学研究機構生理学研究所ポスドク
2015-2021 ニューヨーク大学神経科学センター(Roozbeh Kiani研究室)ポスドク
2021- 現職

高次視覚機能、知覚的意思決定の研究をマカクザルの電気生理学、ヒト行動実験、計算モデリング等を用いて行ってきた。

代表的論文:
1. Luo T, Xu M, Zheng Z, Okazawa G (2023) Limitation of switching sensory information flow in flexible perceptual decision making. bioRxiv, https://doi.org/10.1101/2023.12.03.569827
2. Okazawa G, Hatch CE, Mancoo A, Machens CK, Kiani R. (2021) Representational geometry of perceptual decisions in the monkey parietal cortex. Cell, 184:3748-3761
3. Okazawa G, Sha L, Purcell BA, Kiani R. (2018) Psychophysical reverse correlation reflects both sensory and decision-making processes. Nature Communications, 9:3479
4. Okazawa G, Tajima S, Komatsu H. (2015) Image statistics underlying natural texture selectivity of neurons in macaque V4. PNAS, 112(4):E351-60