21世紀に入ってAI(人工知能)に代表される数理的アプローチや、神経科学(脳科学)の手法が発展したことにより、 意識・ 自己・社会性・合理性といった人文社会科学が数百年に渡って問い続けてきたテーマについて、これまでに見たことがないエキサイティングな研究が数多く登場してきました。このような状況で、人文社会科学の知見と、神経科学・AIの知が融合した先端的な研究を加速することがあらためて求められています。

 しかし、領域横断的な研究をしようと思っても、なかなか難しいものです。最大の理由は、現代の研究教育組織が既存の学問領域を基準として作られているためです。学生は、どこか一つの領域に属して学ぶことが求められるため、他領域のエキサイティングな研究に触れる機会がありません。また先端的な研究をしている研究者も、周囲に自分の研究を理解してくれる人がおらず、孤立して活動していることが稀ではないのです。

 CHAINは、学際的な研究に関心を持ちながらも、学問領域という壁に隔てられてきた人々が集い、学び、研究するための場を提供するために設立されました。

 学際的な研究を展開する上でCHAINが重視するのは、みなさんが具体的な研究プロジェクトに取り組むことです。たくさん講義を受講しても、実験や研究の時間が減ってしまうのでは本末転倒です。CHAINは、研究という実践を通して、メンバーが互いに学び合い、共に成長していくことを目指します。

 CHAINの教育プログラムは、研究室に所属して自らの研究を進めながら、同時に学際的な研究に触れられるようデザインされています。そのため、年2回のサマースクール/ウィンタースクールが教育プログラムの核になっています。そこでは、普段は出会うことがないような第一線の研究者と知り合い、ネットワークを構築することができます。学際的な研究を行うために新たな知識を学ぶ必要がある場合には、必要な講義や演習(CHAIN独自開講科目を含む)を受講できます。また、学際的研究を進める上で、センター教員・コアメンバーの研究指導を受けることができます。CHAINのプログラム受講生には、そのような場が提供されます。

CHAINの教育プログラムを受講することで、たとえば以下のようなニーズに応えることができます。

  • 哲学
    神経科学やAI分野で意識・自己・社会性などについてどのような研究がなされているのか気になる。科学的研究を踏まえた哲学的考察に挑戦してみたい。
  • 心理学系
    強化学習や認知の計算論モデルを使った研究に関心があるが、どこから手をつければ良いかわからない。
  • 社会科学系
    人間社会の規範や文化を、数理モデリングの手法を用いながら、進化論的観点から分析してみたい。
  • 情報科学系
    ニューラルネットを使ったモデルを使うことはできるけれども、実際の脳がどのようにやっているかを知りたい。AIの哲学的含意にも興味がある。
  • 生命科学系
    神経科学の実験を行っているけど、意識、自己、意志といったことにも興味がある。これらについての哲学的なバックグラウンドを知りたい。
  • 医学系
    精神医学を研究しているが、計算論的なモデルを使えるようになりたい。
  • 実験調査系
    データ分析のために統計モデリングのソフトウェアを使おうとしているが、統計検定やベイズ統計モデリングの前提や限界などをきっちり理解したい。
  • モデリングという共通言語を通して、文理の境界を超えた交流をしたい。

以下のキーワードに興味を持たれた方は、
CHAINの教育プログラムを受講することで世界を広げることができるかもしれません。

CHAIN履修内容イメージ