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Hokkaido University
Center for Human Nature,
Artificial Intelligence,
and Neuroscience

CHAIN ACADEMIC SEMINAR #39

第39回CHAIN Seminar 染谷昌義「アフォーダンスの心理学のラディカリティ―サイコロジカルなことの科学への道」

日時 2024年3月27日(水)13:30-15:00
場所 北海道大学 人文社会科学総合教育研究棟 W202室
言語 日本語
主催 人間知・脳・AI研究教育センター
開催方法 対面およびオンライン(オンラインのみ要登録)

第39回のCHAIN Seminarは人間知・脳・AI研究教育センターの染谷 昌義 博士研究員に「アフォーダンスの心理学のラディカリティ―サイコロジカルなことの科学への道」と題して講演をしていただきます。

染谷 昌義氏はジェイムズ・ギブソンが創始した「生態学的アプローチ(生態心理学)」について哲学的に探求してきました。主著として『知覚経験の生態学―哲学へのエコロジカル・アプローチ』(勁草書房)があります。

本セミナーはCHAIN教育プログラムの第1回説明会の終了後にひきつづき開催されます。CHAIN教育プログラムの説明会についてはこちらのサイトをごらんください: 「CHAIN 2024年度 大学院教育プログラムの第5期履修生を募集します」

オンライン参加の方へ: Zoomの登録は以下のURLからお願いします: zoom登録ページ

Seminar1

Lecturer

染谷 昌義
Masayoshi Someya

アフォーダンスの心理学のラディカリティ―サイコロジカルなことの科学への道

Abstract:

1970年前後にアメリカの知覚心理学者ジェイムズ・ギブソンが創始した研究プログラムである「生態学的アプローチ(生態心理学)」の戦略的プロパガンダを試みる(強制ではありませんのでご安心ください!)。このアプローチが知覚と行為を探究し説明する際、重要であるが特に物議をかもしそうな主張をあえて取り上げ、身体性認知科学や4E認知との異同と協働可能性、さらには未来の心の科学と哲学が歩むこともできる道を考え議論する場を提供したい。取り上げる主張は、1)感覚なしの直接知覚・遮蔽知覚―見えない机の裏側も「見えている」、2)自己知覚と知覚性自己運動制御―自分を見ながら自分の行動調整をする、3)異所同時性と場所知覚(地理的環境知覚)―神のようにすべての観察点から世界を知覚する、の三つである。いずれの主張も、環境と知覚者の両事実を特定し行動制御に利用される生態学的情報が、生物外部の環境媒質内にエネルギー場のパタンとして存在するという生態心理学の根本仮説を根拠にしている。生態心理学の観点からは、経験や行動の可能性の主要な条件は、生物主体にではなく環境(と生態学的情報)の側にある。このラディカルさの魅力が少しでも伝わるよう尽力したい。

講師紹介

北海道大学人間知・脳・AI研究教育センター博士研究員。哲学をバックグラウンドとして、現象学的な経験観やJ. J. Gibsonの創始した「知覚と行為に対する生態学的アプローチ」に依拠しながら心のはたらきに関する哲学的問題を考察していた元大学教員。著書に『知覚経験の生態学―哲学へのエコロジカル・アプローチ』(勁草書房)、『身体とアフォーダンス』(共著、金子書房)、『世紀転換期の英米哲学における観念論と実在論』(近刊共著、ratik)、訳書にE.リード『魂から心へ―心理学の誕生』(共訳、講談社学術文庫)など。およそ3年間のコロナ禍を経て、これまでの生活を変えようと北海道移住を計画。最後の仕事として植物や菌類や変形菌といった無神経な生き物の意識や心のはたらきについての近年の研究や植物神経生物学をめぐる論争を調査し原稿にまとめているうちに、生きることと心のはたらきとの連続性とその思想的な意義や可能性をマジで考え始める。原稿は『心の哲学史』(共著、講談社、2024年11月刊行)にて発表の予定。