カオスとランダムネス
Abstract:
ノイズ、入力刺激、制御信号といった変動する環境の影響下で時間発展する動力学、あるいは不定外力に駆動される力学系を非自励力学系という。非自励力学系では、システムと同程度の時空間スケールで環境が変動するため、閉じた力学系ではみられない分岐や特異統計性が生じる。周期的な規則運動にノイズを加えるとノイズに含まれていなかった不規則構造が現れたり、カオス的な不規則運動にノイズを加えると規則運動が現れる、といった雑音誘起現象がその典型である。このように確率的な外力を伴う非自励力学系をとくにランダム力学系という。一般に決定論的ダイナミクスと確率的ノイズが混在する動力学で生じる非線形現象はランダム力学系理論で扱うことができる。本講演では、カオス、ランダムネスと雑音誘起現象について概説する。またCHAIN seminarでの話題として、最近の結果である機械学習系の力学系理論的な分析について議論する。
References:
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