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Hokkaido University
Center for Human Nature,
Artificial Intelligence,
and Neuroscience

2020 CHAIN Summer School

2020年度 CHAINサマースクール:「身体性認知」

日 時 2020年8月24-28日
場 所 オンライン開催
言 語 日本語

CHAINでは「意識・自己・社会性・合理性」といったテーマに対して哲学・神経科学・AI研究の融合した学際的教育プログラムを北大の大学院生に向けて提供しています。その中で夏と冬に開催されるサマースクール・ウインタースクールでは外部講師をお招きし、受講生に最先端の知見に触れ、学際的議論を行う場を提供しています。

 

2020年度のサマースクールはテーマを「身体性認知」として、以下の先生方をお呼びして、講義・議論を行います。

Seminar1

Lecturer

田中 彰吾
Shogo Tanaka

身体性の観点から人間についてとらえ直した「身体性人間科学」の構想

Abstract:

講義1「心の科学と他我問題」
「他者の心を理解すること」をめぐって、1980年代以降さまざまな議論と研究が繰り広げられてきました。その議論の出発点は「心の理論」にありましたが、より長い歴史的展望のもとで振り返ると、社会的認知をめぐる問題は、哲学の「他我問題」や、初期心理学における「意識」をめぐる論争にもその前史を見出すことができます。これらの前史について紹介しながら、社会的認知が心身問題と深く関連していることを明らかにします。

講義2「社会的認知を身体化する」
哲学者のメルロ゠ポンティは、「心の理論」が登場する以前の時代に、他者の心を理解する能力を身体性が下支えしていることを指摘しています。彼は、自己の身体と他者の身体のあいだに「間身体性」という関係が潜在し、この関係が他者理解を可能にするといいます。では、間身体性から出発して、現在の社会的認知の議論を前進させることはできるでしょうか。自他の身体的相互作用がどのような他者理解を可能にするのか、考えてみましょう。

講師紹介

東海大学 現代教養センター 教授

2003年、東京工業大学大学院社会理工学研究科博士課程修了。博士(学術)。メルロ゠ポンティの現象学に示唆を受け、身体性認知科学を刷新する研究に取り組んでいる。著書『生きられた〈私〉をもとめて――身体・意識・他者』(北大路書房,2017年)で湯浅泰雄賞を受賞。

Seminar2

Lecturer

朝倉 暢彦
Nobuhiko Asakura

ベイズ統計理論に基づくヒトの高次認知機能の計算論的および心理学的研究

Abstract:

講義1:「認知システムのベイズモデリング」
ヒトの認知システムの課題は,不確実性を持った感覚データからの有効な情報の抽出,その確からしさの適切な評価に基づく環境理解と行動調節といえる.この課題遂行に対して,ベイズ推定の理論的枠組みは適切な実現方略を示唆し,これまで多くの認知機能がこの枠組みでモデリングされてきた.ベイズ推定による定式化では,データの不確実性を補う事前分布のモデリングが強調されることが多いが,より重要なのはデータの生成過程のモデリングを含めた「内部モデル」を用いた推論となっていることである.ここでは知覚のベイズモデリングを導入として,「心の理論」を自己と他者の内部モデルによる心的状態のベイズ推定として定式化した研究を紹介する.

講義2:「身体化認知とイメージ」
心的イメージの操作は,物体認識や思考,コミュニケーションなど多くの認知機能に関わっており,イメージ生成や変換においては自己の運動制御機能や身体図式が重要な役割を果たしていることが明らかにされている.ここではイメージの機能を身体性に基づく状態予測と捉え,これが物体認識や心的回転に対してどのように寄与しているかを考察する.また,この身体性に基づく状態予測機能が制御対象の内部モデル(順モデル)とみなせること,そして吃音といった構音障害がこの順モデルの機能不全に起因することを示唆する研究についても紹介する.

講師紹介

大阪大学 数理・データ科学教育研究センター 特任准教授

1998年,京都大学大学院文学研究科博士後期過程修了.博士(文学).研究の出発点は視覚心理学(立体視)ですが,これを含めヒトの様々な高次認知機能をベイズ推定の枠組みで計算理論の水準で理解することを目指して研究を行っています.