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2022.9.26 Release
CHAIN専任教員の吉田正俊特任准教授、Zlata Polyakova博士研究員の共著論文が出版されました。
Polyakova Z, Iwase M, Hashimoto R and Yoshida M (2022) “The effect of ketamine on eye movement characteristics during free-viewing of natural images in common marmosets.” Front. Neurosci. 16:1012300. doi: 10.3389/fnins.2022.1012300
統合失調症は視線の移動に影響を及ぼすことが知られています。たとえば、画像を自由に観ている状況(フリービューイング)での視線の計測を行うと、統合失調症の患者では統制群の被検者と比べて視線の移動距離や視線移動の回数が低下していることが以前の研究から知られています (たとえば森田らの論文(2017): doi: 10.1111/pcn.12460)。
そこで本研究では、ヒトを対象とした研究で行われてきたフリービューイングの実験を、小型霊長類であるマーモセットで再現できるか検証を行いました。上記の森田らの論文(2017)とまったく同じ視覚刺激(56枚の自然画像)とまったく同じ視線計測機器(SR Research社 EyeLink 1000Plus)を用いました。統合失調症の薬理モデルとしてこれまでに動物研究で用いられてきた、低用量(0.5mg/kg)のケタミンの筋肉注射を行いました。その結果、ケタミン注入条件では生理食塩水注入条件と比べて視線の移動距離や視線移動の回数が減少することが明らかになりました。以上のことは、NMDA受容体ブロッカーであるケタミンが視線移動に関わる視覚的注意に影響を及ぼすことを示唆しています。さらに本研究はマーモセットが統合失調症の動物モデルとして有用であることを示唆しています。
本論文は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構 (AMED) 革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明(革新脳) 「双方向トランスレーショナルアプローチによる精神疾患の脳予測性障害機序に関する研究開発」(代表者: 東京大学 小池進介)の分担課題「視線計測に基づいた状況予測機能のマーモセット神経回路解析」(分担者: 北海道大学 吉田正俊)での活動の成果です。