[博士研究員を募集します(2020/1/23)]
(更新2020/2/3: [0. 公募要領]の部分にJREC-INへの掲載情報を付加しました。センターの名称が「研究センター」となっている箇所があったので「研究教育センター」に直しました。さらに以下の訂正を行いました。[1-1. 研究プロジェクトについて]=>[1. 研究プロジェクトについて]、[5. 応募方法、選考過程]=>[5. 応募方法]。募集内容自体については変更ありません。)
(更新2020/2/4: 「ので延長を目指して成果を出さなくてはならない立場です」を付加しました。)
[北海道大学 人間知・脳・AI研究教育センター(吉田グループ)博士研究員募集]
これまで吉田正俊は生理学研究所において、統合失調症の脳内メカニズムの解明を目指して、マーモセットを実験動物として、視線計測と神経活動計測を用いた研究を進めてきました。2020年1月より北海道大学 人間知・脳・AI研究教育センターに特任准教授として異動して、独立した研究ラボを開始しました。そこで本研究の中心部分を担当していただく博士研究員を1名募集します。
[0. 公募要領]
公募要領は北大本部 採用情報のこちらにあります: 公募要領PDFファイル また同じものがJREC-INからも入手可能です。
こちらの公募要領を読んでいただいた上で、さらに詳しい情報(研究プロジェクト、応募書類、選考方法)をこのページは提供します。
[1. 研究プロジェクトについて]
吉田グループでは統合失調症の脳内メカニズムの解明を目指した研究を行っております。統合失調症患者では眼球運動および視覚探索の空間パターンが影響を受けていることが以前から知られております。吉田はこれを視覚サリエンスへの影響として捉えることでヒト-動物で共通の脳・行動マーカーを確立できるのではないかという作業仮説を持っております。この仮説の実証のため、統合失調症患者での視線計測データの解析、マーモセットでの視線計測と脳活動計測を行う研究を進めてきました。
現在吉田がマーモセットを対象とした研究で用いている実験手法は以下のとおりです:
- フリービューイングおよび眼球運動課題中の視線計測(EyeLink 1000+)
- 聴覚性、視覚性ミスマッチ陰性電位の計測と視覚心理学(Matlab、Python使用)
- 内視鏡型Caイメージング装置(Inscopix社nVoke)を用いた神経細胞同時活動記録
- 96ch ECoG電極による全大脳皮質活動計測(理研CBSとの共同研究)
- ChR2を用いた光遺伝学的操作(京都大学との共同研究)
- 視覚サリエンスおよび予測符号化についての計算論モデル
- 微小眼球運動のダイナミクスの解析(チュービンゲン大学との共同研究)
本研究はAMED「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト」(略称 革新脳)の前期(2014年10月-2019年3月)のサポートを受けており、吉田は「大規模脳画像解析とヒト-霊長類トランスレータブル脳・行動指標開発にもとづく精神・神経疾患の病態神経回路解明」に分担機関業務主任として参画しました。この共同研究プロジェクトの生理研の代表として「自発性眼球運動を指標とするサリエンシー検出機構の回路抽出」というタイトルで研究を行ってきました。
昨年の4月から開始した後期の革新脳(2019年4月-2024年3月)では「双方向トランスレーショナルアプローチによる精神疾患の脳予測性障害機序に関する研究開発」 に分担機関業務主任として参画しています。この共同研究プロジェクトの北海道大学の代表として「視線計測に基づいた状況予測機能のマーモセット神経回路解析」というタイトルでひきつづき本研究を推進してゆきます。
今回の募集では、後期革新脳プロジェクトでの実験、解析について中心的役割を担っていただける博士研究員を募集しております。
実際にやっていただく実験についてですが、詳しくは下記の資料請求をしていただきましたら、詳しい研究内容と未発表データについてお知らせします。最新の実験では、マーモセットの頭頂連合野でGCaMP6fを発現させてフリービューイング中のCaイメージングに成功しております。
[2. 本募集のアピールポイント]
- 実験室、動物飼育室の環境: 現在、北海道大学 大学院医学研究院 附属動物実験施設 への使用申請を行っており、年度内(予定)に承認が降りると、上記の研究が可能な実験室(1スパン分)およびマーモセット飼育室(1スパン分)を専有して研究に使用できます。マーモセット個体も現在14頭を保有しており(最大16頭まで飼育可能)、これをすべて研究に使っていただくことができます。(神経科学の研究者一人あたりの頭数としては、おそらく国内最大級だと思います。)
- サポートスタッフ: 動物実験施設ではマーモセット飼育に関わるサポートスタッフに平日の動物飼育業務をしていただくことになっております。また、土日の動物の餌やり等に関しても動物実験施設で管理していただきます。(年に数回ある動物の手術の直後には、様体を見るために土日に飼育室に入室する必要があるかもしれません。これについては吉田と手分けして行います。)
- 研究の進行状況: これまでの予備的研究から様々なpreliminaryなデータを蓄積しております。たとえばマーモセットにおけるECoG実験については3頭から計測したデータについて発表済み、nVokeを用いた内視鏡型Caイメージングのデータについては、2020年2月の日本マーモセット研究会大会にて1頭目のデータについて発表する予定です。現在本プロジェクトの研究者は吉田のみなので、これらのpreliminaryな成果を引き継いでいただければ、速やかな論文発表が可能となると思います。
- 研究費の確保: 上記の通り、本研究プロジェクトは後期革新脳(2019年4月-2024年3月)のサポートによって行いますが、応募者の給与を含めた本プロジェクトに必要な研究費はすでに確保済みです。さらに現在申請中の競争的資金によって、より安定したラボ運営を行ってゆく所存です。
- 研究室の環境: 人間知・脳・AI研究教育センターの中に研究室を設置します。神経科学、AI、哲学といった様々なバックグラウンドを持つ教員(現在3名)、博士研究員(現在2名)が集結しており、これからさらに拡大していきますので、エキサイティングな環境が育っているところです。いっぽうで、実験についての議論、指導などについては、吉田が専従で行いますので、困ったときにはすぐ相談、議論、解決できる体制です。
- 教育、指導体制: 吉田はこれまで生理研に併設されている総合研究大学院大学(総研大)の大学院生の指導を行い、2名の博士号取得に貢献してきました。またこれまでに革新脳、CREST、HFSPの枠組みの中でポスドク研究者5名(海外からの研究者3名を含む)との共同研究を行い、数多くの論文を出版してきました。以上のようにして研究における共同作業、教育、指導について豊富な経験を持っております。
- 北海道大学のメリット: 北海道大学には吉田グループ以外にも霊長類(マカクザル)を対象とした研究をするラボを含めて、神経科学を行うラボが数多くありますので、情報交換、ノウハウの共有をして協力しながら研究することが可能です。また、北大CHAINでは神経科学、AI、哲学の融合を目指して、さまざまな共同研究を行い、シンポジウムや研究会などの各種イベントも開催してゆきます。また、北海道大学は広大なキャンパスを持つ総合大学ですので、生協などの設備も充実しております。
- 北海道 札幌市のメリット: 私吉田もこの1月にまだ来たばかりで充分にはわかっておりませんが、北海道大学は札幌駅北口から徒歩5分の距離で、大通やすすきのなどの繁華街へのアクセスも良く、交通の便はとても良いです。北大の周りには多くのマンションがありますが、都会であるにも関わらず家賃はかなり低めです。
- あと吉田が人格的に温厚。
- というか、人間関係、性格の合う合わないはなによりも(研究テーマや将来性よりも)重要です。面接などの選考過程を通して、吉田とストレスなく人間関係を構築できるか見極めたうえで、着任するかどうかの判断をしていただけたらと思います。(選考する側も選考されてるんだよっていう自覚を表明。)
- 本公募は、後期革新脳の終了(2024年3月)までの最大4年という年限があります。吉田自身も特任准教授として任期があります(2024年3月)ので延長を目指して成果を出さなくてはならない立場です。それでも上記のメリットがうまくマッチして、現状よりも幸せになれそうだという方にはぜひ応募していただけたらと思います。
[3. 応募条件]
募集側と応募側のミスマッチを防ぐために、吉田の方からは、 以下の2つの条件を満たす方のみに応募を絞らせていただきます。
- 3-1) 神経科学およびその関連の分野で博士取得、もしくは取得見込みの方。
- 3-2) ご自身で動物(哺乳類)を対象とした実験を行った研究で一報以上の筆頭著者論文を持つ方。
- 補足1: 本募集はマーモセットを対象とした研究をしていただくものですが、マーモセット研究の最大のツボは、行動トレーニングだと考えています。当方には行動トレーニングのノウハウとその指導体制がありますが、まったくゼロからのスタートでは残り4年間のプロジェクトを完結させるには時間が足りません。そこで条件3-2を設定しました。
- 補足2: マカクザルやラット、マウスなどと比べると、マーモセットは実験動物としての歴史が浅いため、行動トレーニングを用いた認知神経科学的研究はまだまだ少ないです。しかし、近年はJude Mitchellの論文(JNS 2014)でのサッケード課題や東大松崎研の論文(Nat Commun. 2018)でのレバー引き課題など、行動トレーニング法が急速に進歩してきています。マーモセットを用いた認知神経科学を行うには今がチャンスです。
- 補足3: 神経科学的実験の経験、行動や脳活動の解析のためのプログラミングの経験がある方を歓迎します。
- 補足4: 今後研究を続けてPIとして独立することを目指す方を歓迎しますが、必須ではありません。(アカデミックの世界でのキャリアアップを応援しますが、最終目的がそうでなくも手のひら返したりしません。)
- 補足5: 動物が相手なので、様態急変などに対応できるように大学近辺に在住できるほうが望ましいです。でもこれも必須ではありません。
[4. 採用後の待遇(給与、勤務時間、休日、雇用期間、保険等)]
- 上記の[0. 公募要領]からご確認ください。以下補足事項です。
- 採用期間: 着任は早ければ早いほどありがたいですが、現在のお仕事、学業の都合もあるかと思いますので相談しましょう。3月に学位取得の方も歓迎します。
- 給与及び諸手当: 給与額については概算した資料を作成しておりますので、[5. 応募方法]にあります資料請求の段階でお問い合わせください。
[5. 応募方法]
募集側と応募側のミスマッチを防ぐ、お互いの手間をなるたけ少なくする、ということを考慮して以下の段階を踏んでいきます。
- A. 資料請求: この公募に興味を持った方はまずは吉田 myoshi@chain.hokudai.ac.jp までメールして資料請求してください。(お名前、メアド、身分、所属、所属のわかるweb上の情報など、身元が分かる情報をお知らせください。) この公募についての詳しい資料(研究内容についての未発表資料、給与額の概算などの非公開情報など)を吉田から返送します。この資料を読んでいただいたうえで、改めて申し込むかどうか判断していただけたらと思います。
- B. 応募: 応募をすると決断した方は以下の参考資料を吉田 myoshi@chain.hokudai.ac.jp までメールしてください。選考作業は応募をいただき次第順次進めてゆきますが、目安として2/29を締め切りとします。いきなり応募せず、かならずAの資料請求を行ってからにしてください。
- 上記の条件3-1を満たしていることがわかる証拠。あらかじめcurriculum vitaeを作成している方はそれで結構です(写真不要、年齢不要、日本語英語どちらでも可)。それ以外の場合は、どこの大学で、指導教官は誰で、どのようなタイトルで、いつ博士号を取得したか(する予定か)について書いてください。
- 上記の条件3-2を満たしていることがわかる証拠。CVにpublication listが入っていればそれでよいです。それ以外の場合はご自身のresearchmap, google scholar, ORCIDなどのURLを教えてください。
- 現在の指導教官(現在研究活動を行っていない場合はいちばん最近の指導教官)がどなたか教えてください。(指導教官からの推薦やreferenceの許可はこの時点では不要です。第一次面接以降であらためて依頼します。)
[6. 選考方法]
2/29の締切を待たず、順次進めてゆきます。
以上です。ぜひ応募よろしくお願いします。
北海道大学 人間知・脳・AI研究センター
特任准教授 吉田 正俊
mail: myoshi@chain.hokudai.ac.jp
北大CHAIN URL: https://www.chain.hokudai.ac.jp/members/pooneil/
Researchmap: https://researchmap.jp/masatoshiyoshida/
Google scholar: https://scholar.google.com/citations?user=rKyFv60AAAAJ