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Hokkaido University
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CHAIN セミナー 「センター教員就任記念シリーズ」第2回

日時 2020年8月3日(月)14:45-16:15

島崎秀昭(CHAIN特任准教授)
「神経活動の数理モデリングで回路・情報,そして意識へ迫る」

要旨 本講演では,私たちが行ってきた神経科学の理論研究を紹介し,これから北大CHAINで行う研究を共有して皆さんと議論する機会としたい。神経細胞の複雑な集団活動を捉えるために,私たちは統計数理モデルを用いてその相互作用を可視化し,システムの特徴を捉える研究に取り組んできた。その結果明らかになる背後の回路構造や情報符号化を紹介する。加えてCHAINでは,生成モデルとしての脳の理解(ベイズ脳仮説)に取り組みたい。ベイズ脳仮説では神経の刺激応答活動は外界を推論するための事後分布を形成していると考え,これを支持する実験結果が蓄積されている。これを踏まえ,変分推論を実現する生物学的な神経回路網の数理的な理解を深めるとともに,数理モデルを介してデータから脳内の外界モデルを明らかにし,意識的体験に迫る研究を行いたい。特に初期感覚野では刺激応答活動の全てが感覚体験の報告に繋がるわけではなく,気づきや注意の効果はフィードバック回路を介した時間遅れ変調として現れる。この効果を定量化できる理論として提案しているニューラルエンジン理論を紹介する。従来のベイズ推論を熱力学的な見方で拡張することで得られるこの理論では,気づきや注意に関わる神経活動をエントロピーという指標で定量化できるだけでなく,生成モデルに基づきその内容にも踏み込むことができる。人間の意識的な体験の定量化にも適用可能と考えられ,CHAINにおける意識研究としてどのように位置付けられるか,哲学者・心理学者の皆さんも交えて議論したい。